
そろそろ咲き終りですが、現在営火場でキツネノマゴがきれいに咲いています。
この花の虫を引き寄せる力はかなりのもので、ジャノメチョウ、セセリチョウ、モンキチョウなど、チョウ類を中心に多くの種類の昆虫がきています。
キツネノマゴの花自体はとても小さく、その小さな花にまるで吸い寄せられるかのように的確にたどり着く昆虫の能力にも驚かされます。
特に移動速度の速いセセリチョウは精密機械のようです。
ところで、花はなぜ正確な場所に昆虫を引き寄せることができて、また昆虫の方も的確に花にとまることができるのでしょうか。
その理由は花の色彩効果と昆虫の視覚にあります。
下にあるのは、キツネノマゴの拡大写真です。

そして次の写真は同じものを暗室でブラックライト(紫外線と近紫外線[可視光線のうち紫外線に近い波長の光]を照射するライト。人間は紫外線を見ることができないので光っているが黒く見える)で照らし出したもの。

花弁の周りとおしべだけが強く光っているのが見えると思います。
少しわかりにくいかもしれないのでもうひとつ例を挙げてみたいと思います。
下の写真はセンニンソウです。

人間の目にはただ真っ白いだけの花に見えます。
この花にブラックライトを当てるとおしべを中心に紫外線反射領域があるのが分かります。

もうお分かりだと思うのですが、昆虫には紫外線が見えていて、その光を頼りに花にまでたどり着いています。
昆虫が紫外線に惹かれるということも、同じ実験からわかります。
チョウ類を暗室に置くと活性が低くなる(ほとんど動かなくなる)のですが、そのなかでチョウに紫外線を向けると、光源に向かってくるか光源に対して背部を向けるという反応をします(半暗室ではブラックライトに向かって飛んできます)。
モンシロチョウの場合は暗室では紫外線に背を向け、ライトを左右に振ると振り子のように翅を左右に傾けます。

(田中)