身近な自然の驚異の営み

 少年自然の家、つどいの広場中央にある池です。

 いつもと変わらず、今日も少年自然の家の前にあります。

 当たり前のように存在しているとそうめずらしいものでもないような気がしてきますが、実はこの池、スゴイんです。

 一見それほど豊かな自然のようには見えませんが、この池には微生物も含め、今日確認できただけでも十七種類以上の生物がいます。

 左側はギンヤンマかオニヤンマのヤゴで、右側はミズカマキリです。

 写真だと分かりづらいですが、ヤゴは5cmほどの大きさなのでかなり見ごたえがあります。

 でも今日はヤゴでもミズカマキリでもなく、こいつをフィーチャーしてみたいと思います。

 これです。

 マツモムシという半翅目の一種(カメムシの仲間)なのですが、この虫、すごい特技をもっているんです。

 実は写真ではもうすでにその能力を発揮しているのですが、このままだといったい何がすごいかわからないので、同じマツモムシを写した別の写真を見てみたいと思います。

 水槽の水を抜いてみます。

 これが水から出た時のマツモムシです。

 結構かわいい顔をしています。

 でも、もちろん顔がかわいいことが特技なわけではありません。

 もうお気づきだと思いますが、水の中と外とで、体表の色が違います。

 水の中では銀色に見えていましたが、水から出ると黒と茶色の、案外地味な色をしています。

 この色がマツモムシの本来の体色です。

 肉眼で見てもわからないのですが、顕微鏡で見るとマツモムシの体表には細かい毛がびっしりと生えています。

 風呂に入った時にすね毛に気泡がつくのと同じ要領で、マツモムシは体表に生えた毛に空気を含ませます。

 そうしてできた空気の層が光を反射することでマツモムシは自分の姿を眩ませています。

 もう一度水の中にいるマツモムシの写真を見てください。

 空気の層で反射した光で肢以外の部分を見えなくさせています。

 かなりのステルス性能ですね。

 ほとんど「鏡」です。

 逃げたり騙したり隠れたりしながら、今日も小さな池の中ではたくさんの生き物がしたたかに生きています。

(田中)